夕月(すすきの) – すすきので客引きについて行くと、どういうことになるかすべて話そう

前回までのあらすじ(むかしむかし、すすきのにて…

おれはサッポロの激安ソープで母上に会った。四つん這いになって、ケツをおれに向けた母上。今でもときどき空を見上げると、あのケツの穴が目玉の表面にへばりついているように、チカチカしやがる。

母上はおれに言った。

「あなたは、もう一度ここに来ます。わたしには分かるんです」

ママ、あなたには会えなかったけど、別のあなたに会えたよ。

ママ、これで再会したことにしておくれ。もう、最後にしておくれ。

 

雪の舞うサッポロにおれはいた。夜の10時過ぎだ。おれは当てもなくケツ洗い店を探していた。Manzoku Stationが見えたので寄ろうとしたが、既に閉まっていた。その前にいた黄色の服を着たメガネに声をかけられた。服装と口調から関係者なのだろう。

メガネはファイルを取り出し、おれに「健康店」を紹介してきた。すすきのは店舗型の健康が一番だとメガネは主張した。

健康にいくつもりはない。

おれはキッパリと断った。

「今の時間からソープですか?うーん、この時間は、ろくな店が残ってないですし、女の子選べる店はありませんよ。いいんですか?」

なに?そんな話は聞いたことないぜ

「すすきののソープは、今の時間は女の子は選べませんね。ヘルスの方がいいと思うんですけどね」

くどい。興味ないとさっき言った。

「分かりました。それなら、今の時間で女の子がいる店で、一番きちんとしたところをご紹介しますよ。ちょっとはずれにあるので歩きますよ。」

おれたちはスケートリンクのようなすすきのを歩いた。この男が信用できるか分からないが、話のネタになりそうだ。おれはスリリングな展開にエキサイトしていた。

いや、見栄を張るのはよそう。おれは普通にメガネのことを信用していた。

メガネは2軒の風呂屋の前で足を止めた。

「右側の店です」

「夕月」と看板にあった。

「すぐに入れる女の子がいるか確認してみますね」

おいおい、それは歩く前に確認するものだろ?誰もいなかったら、今来た道を引き返せというのか?そもそも目の前であるんだから、入って確認すればいいじゃないか?

メガネは手際の悪さを詫び、電話で確認するのがルールだと説明した。メガネがおれに背中を向けて電話で話している。あいつ、舌を出して話していたに違いない。

女は1人だけいるらしい。ただ、写真は見せられない。料金は2万3千円。おれは合意した。何と言ってもおれはメガネを信用していた。夜の11時頃だった。

店からみすぼらしいおっさんが出てきて、おれを案内した。店のカウンターには、太ったおばさんがいて、そこで金を払った。いかにもこういうところで店番をしていそうなおばさんだった。世界のどの場末にもこんなおばさんがいる。

料金を払うと案内部屋に通された。民俗博物館の展示コーナーのような古めかしい部屋だった。さっきのおばさんといい、この内装といい、だんだん不安になってきた。おれは、こそこそと精泉ビンビン液を飲んだ。

10分もしないうちに、声がかかった。案内された階段の上には、母上二号が膝をついて座っていた。40後半、いや50越えもあるか。くたびれた扇情的な衣装は、マニラの安売春宿にたむろしている女たちを思い出させた。

おれは騙されたことを悟った。絵に書いたような客引き被害だ。あのメガネ、今頃パーティーでも開いているに違いねえ。

母上二号は、コメディアンの「次長課長」の生活保護の方にそっくりだった。前回(2008年)の大統領選予備選の頃のヒラリーだったら、ぶっちぎりで彼女に勝っている。ニヤリと笑うのが特徴だ。おれが嫌いな卑屈な笑い方だ。

これまたボロい部屋に通され、服を脱がされた。次長も自分で服を脱ぎ、その美しいとは言い難い裸体を露わにした。

おぞましいものを見せられたのは、次長がシャワーの準備をしに行ったときのことだ。

話ができすぎている。あんたは信じてくれるだろうか?ヤツが背中を向けた瞬間におれは見た。次長のケツにはバンソーコーが貼ってあった。正確に言うと、腰に近い位置のケツだ。

ケツ洗い場で、ケツにバンソーコーを貼った女に会った男がどれくらいいるだろう?もしかすると、メグ・ライアンとデートをした男よりも少ないかもしれない。おれは、ある意味ではこれは幸運でもある、ということにした。

シャワーを浴びて、おれはひとりで風呂に浸かった。妙に寒かった。体の右側がスースーしやがる。ふと見上げると、窓がわずかに開いていた。母上と雪見風呂だ。おれは窓を閉めた。

幸か不幸か、母上はけっこう重度な地雷だった。マットをされたが、いちいち動くなとか手を出すなとか注意をしてきやがる。ママ、手なんか出さないよ。

おれにも分別ってもんがある。精泉ビンビン液の効果も抑えつけ、おれは勃起をしなかった。母上がおれのペニスを掴み、オマンコに当てがろうとしても、ペニスはグニャっと横に曲がった。母上は明らかに面倒臭そうだった。どっちかというと、おれの反応の方が普通だぜ。全米1億人の男がこういう反応をするだろうよ。

結局、ハンドジョブをさせた。多少は硬くなりはしたが、持続しない。おれは面倒になり、帰ることにした。いちいち弁明したくねえが、おれは母上にキスもしなかったし、触りもしなかったぜ。

服を着て、コーラを飲んでいるときに、少し会話をした。この店は年配の客が多いらしい。そのとおりだろうな。北海道がいくら広くても、敢えてこの店を選ぶ若い男はそうそういまい。ここで働いているベテラン女たちが若い頃からの常連なんだろう。

会話の中で母上がこう言った。

「アタシは去年からここで働いているんだけど・・・」

アンタ、去年採用されたのか?

その日の一番のサプライズだったよ。よほど人手に困っているんだろうな。それとも、今流行の慈善事業を兼ねたビジネスを目指しているのか。フェアトレードってやつだ。

店を出るときに、出口にいたおっさんに小さな紙袋を渡された。

「粗品です」

中には靴下が入っていた。な、前に書いただろ?こういう店は皮肉ってのを分かってるんだ。粗品をくれるソープ店なんて行ったことないだろ?あるんだよ、そういう気遣いができる店が。でも、すげーババアを出してくるんだぜ。こんな靴下代じゃ、女の給料に回しても、あのバンソーコーは取れねぇだろうな。

店を出て、目の前を過ぎようとしていたタクシーを止めた。タクシーに乗り込みホテル名を告げた。車は風俗街の中心を抜け、ホテルに向かおうとしていた。

アリエーネ。

たしか、アリエーネの店もこの辺だった。

おれは、タクシーの窓の向こうの、雪が舞うサッポロの町並みを眺めながらアリエーネを想った。

アリエーネ。今日も一心不乱に泡を泡立てているのだろうか。あのままだと彼女も今日行ったすすきのの隅の店に流れることになるだろう。

チナスキーとアリエーネ。こう書くと、ヒトラーのソ連侵攻によって仲を引き裂かれたドイツ軍の若い将校とロシアの没落貴族の娘のようだが、現実はしがない風俗客と地雷ソープ嬢だった。

おれは溜息をついた。

「おばさんだったでしょ、お客さん?」

運ちゃんが、おれの溜息を待ち構えていたかのように口を開いた。

「あの店とすぐ隣の店は、おばさんしかいない店なんでさ。40、50、一番若くて30代ってところですね」

「客引きですかい?あの2店は客引きが連れて行く店なんですよ。給料が安いからね、客引きに渡すマージンが取れるってわけですよ。若い子は給料が高いでしょ?でも、料金を高くしたら客なんか来やしない。客引きに払うマージンなんてないんですよ」

「次に札幌に来るときは、自分で選んでくだせぇ」

実に筋の通った説明で、おれは感心した。おれが、もう少しだけスマートだったら、説明されなくても気付いていただろう。

「この辺でいいですか?」

運ちゃんがホテルの少し手前でタクシーをとめた。おれは雪を踏んでホテルに戻った。

今晩、多分、おれはペニスを握ることになる。

12 件のコメント

  • 女性ですがさん
    コメントありがとうございます。こういう具体的なポイントを挙げて、おもしろかった、つまらなかった、こう思った等というコメントは、とても参考になり、ありがたいです。

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