【時効】ソープで本当にあった怖い話【成立】

もう何年も前だ。彼女の名前はもう忘れた。時効になったから、おれは今これを書いている。

彼女をテンポラリーパートナーとして選んだ理由はパイオツのデカさだ。ハンバーガーも車もパイオツがデカけりゃいい。

彼女と会って、おれたちは例の魔法によって顔を合わせた瞬間意気投合して手を繋いで階段を上っていった。

女はフレンドリーだった。初対面の男と話すのに慣れていた。若干擦れた風ではあったが、顔は可愛く、ワンピースの胸の谷間に収まりきれないパイオツの上半分がおれの視線を捕まえては離さなかった。

何を話したかは覚えていない。女は笑顔でおれの服を脱がせていった。そして自分は服を着たままフェラチオを始めた。

胸の谷間をバッチリ見せつけながら、おれのペニスについて「気持ち良さそう」だの「元気ね」だのを言っていた。タマを舐め、竿をしゃぶり、足と股間の接続部分を舐められた。

女は立ち上がりおれの膝に座ってキスをしてきた。濃厚なキスだった。

「落ち着いてるね」

女はそう言った。そりゃそうだ。毎週のようにこんなことしてれば、誰だって慣れるさ。

女は楽しそうな表情をしていた。おれは、女のビジネスライクな部分を見透かしていた。その笑顔はプライスド(priced)だった。だから彼女の言うとおり冷静だった。しかしペニスは勃起していた。人は冷静でも勃起ぐらいはする。勃起する度に鼻息荒くしていたら、鼻の穴がつながっちまうよ。

女を膝に乗せたまま、ワンピースのファスナーを下ろし、彼女を上半身だけ下着姿にした。ブラジャーとGカップが作る谷間に顔を埋めた。その瞬間顔に何かぶつかったような感触を覚えた。

かてぇ

ぶったまげた。柔らかい魅惑の谷間に顔を突っ込もうとしたら、ゴチンときたのだ。豆腐に経絡秘孔を突こうとしたらサトウの切り餅だったときくらいの衝撃だ。

これが世に言う、シリコンオッパイか。本当にあるんだ。今まで感じた偽パイ疑惑なんて、子供騙しだ。これがモノホンのギニューか。

だが、それは始まりの合図に過ぎなかった。「これからがほんとうの地獄」だった。

おっぱいの硬さは衝撃だったが、おれは平然を装った。女がどういう気持ちだったかは分からない。多分、どうってことないのだろう。

とりあえず、おれはブラを外した。あのシチュエーションで他どんな選択肢がある?彼女の乳首を舐めた。それがどんな感触なのかは覚えていない。ブラの上から硬かったのだから、ブラを外しても硬かったのだろう。下を脱がせるために、おれは女を膝の上から下ろした。おれたちは全裸になった。

女はベッドに座るおれの両足の間に陣取りフェラチオを再開した。彼女はニコニコしていた。異質なのは胸の硬さだけで、後の部分はノーマルなビジネスパーソンのようだ。おれは少し安心した。プロフェッショナルな女の技に、おれの腰は上半身をささえきれなくなった。部屋に入って10分くらいだった。いや、もっと短いか。

「寝る?」

みたいな会話があったと思う。女が先に横になり、おれはその上から覆いかぶさろうとした。顔と顔が至近距離になった。

その時だった。

あの忘れられない出来事が始まった。

「ねえ、あなた普通のお客さんじゃないでしょう?」

超能力者か?

フォース使いなのか?あんたジェダイナイトか?

「え?」

咄嗟の日本語が出ず、おれは言葉に詰まった。

「そんな落ち着いているお客さんいないもん。普通と違う。あなた、社長とかに報告する人でしょう?」

社長に報告するかどうかはともかく、おれはソープジャーナリストだから、あながち間違ってはいない。なんという勘の鋭い女だ。

女はむっくりと起き上がった。さっきまでとまるで別人のような表情だった。愛に満ちていた顔が、憎悪丸出しの顔になっていた。おれが今まで会ってきた天使ちゃんたちも、一歩間違えるとこんな顔をするのだろうか?そんなことを思った。

「絶対普通のお客さんじゃない。分かるの」

ここから先のことはあまり語りたくない。というか、語るつもりでここまで書いてきたのだが、急に情けなくなってきた。

「誤解だ。普通の客だぜ」

それくらいの言葉しか出てこなかった。おれはパニック状態だった。鼓動が早くなり、体温が上がっていくのが分かった。ガキの頃、おもちゃ屋を出たらヤンキー集団が待ち構えた時に感じた血流を体が思い出した。

「絶対社長とか店長に報告する人でしょ?私、そういう人に接客したくない」

「じゃあ、どうすればいいんだ?」

「私もメンタル強くないから、こんな気持ちになったら接客できないから。もう帰ってほしい。帰って!」

おれも帰りたかった。しかし、払った金はどうする?オビワン、こういうときはどうすればいい?

おれが返す言葉を見つけられないでいると、女が続けた。

「お金なら、私が返すから。帰って」

ラッキー、と思った。

「返すって、いくら返してくれるんだ?」

「今は現金がないから、返せない」

ダメだ。何を言っているのかさっぱり分からねぇ。

おれの課題は、女の言っていることが、おれが低俗モノ書きという意味においては間違っていなくて、一種の後ろめたさを感じていることだ。もし、おれが普通の客だったら、女の言っていることは言いがかりも甚だしいということになるだろう。

「お金は返すから」

「ないんだろ?」

「ない」

そんなやり取りを繰り返した。

おれはこの女のせいで、店のブラックリストに載って出入り禁止になるんじゃないかと心配になってきた。出入り禁止ならまだいいが、厄介なトラブルはごめんだ。そう思うと、金のことはどうでもよくなってきた。先に帰ったら、何を言われるか分かったもんじゃない。今思いつく最良の策は、このまま部屋の隅と隅で携帯でもいじるか、仮眠でもすることだ。

残りの時間をこの女とこの部屋で過ごすのは愉快な体験ではないが、店を巻き込んだトラブルになるよりはマシだ。

しかし、女は「早く帰って」の一点張りだった。

おれはだんだん腹が立ってきた。

「分かった。こうしよう。あんたの取り分は一円も要らない。代わりに、今からスタッフにコールしてくれ。おれを帰させたいと言ってくれ。店の取り分は返してもらうようにフロントで交渉する」

思いつきでこう言った。彼女があきらめて最後まで過ごすか、おれの目の前で店に説明をするか、どっちかだ。正しい判断だ。できれば、退室して金を取り戻す方向になってほしい。

女は躊躇していた。当然だ。ヤツも店とモメたくないのだ。

「どっちにしてもコールしなきゃ帰せないわけだろ?」

この言葉は説得力があったらしい。女はあきらめて、服も着ないでコールをした。

「このお客さんの接客したくないんです」

「いえ、そういうわけじゃないんです。接客したくないんです。だから、そうじゃなんです。帰ってほしいんです」

そんなことを言っていた。まあ、簡単には理解されないだろう。

後ろで話を聞いていて、おれは安心した。恐らくスタッフは「乱暴をされたのか?」みたいなことを聞いたのだろう。そして、女はそれを否定していた。今思えば、嘘をつかれるリスクがあったわけだが、彼女は真実だけを話しているようだった。彼女はおれをハメようとしていたのではなく、純粋におれが嫌だったのだ。その実直さに感謝した。そして少し憐れに思えてきた。

「無理だって」

電話を切って、女はおれに言った。そして、再び「帰って」を繰り返した。おれは何という無駄な時間を過ごしているのだろう。

帰ってほしいのなら、そう主張するしかないと彼女を説得した。おれも早く帰りたかった。そのためには、店と話をつけてもらうしかない。

再び女が立ち、インターホンを手に取った。さっきと同じような会話が聞こえてきた。電話の相手と彼女は難しい話し合いをしているようだった。

「変わってって」

女が振り向き、おれに言った。少し落ち着いたような表情をしていたのに驚いた。

「店長の〇〇と申します。あの~、〇〇さんがあのように言っているので、お金は全額返しますから、申し訳ありませんが、戻ってきていただいていいですか?」

想定していたよりもはるかに柔らかい口調と内容だった。おれもそうしたいと伝え、電話を切った。

受話器を彼女に戻して、おれは服を着た。彼女も受話器を置くと、服を着た。

おれたちは黙ったまま2人で部屋を出て、階段を下りた。世界で一番長い30秒だった。階段の下につくと、女は何も言わず、立ち止まった。おれも振り返らないまま店員に迎えられた。

数人いた店員たちは同情の態度で接してくれた。何度も詫びられた。聞いたところでは、彼女は評判がよくないらしく、どうやら店側にも思い当たる節はあったらしい。彼らと少し立ち話をしていたのだが、全員が被害者のような意識を共有していた。

無事返金をされて、送迎車まで用意された。「また是非お越しください」と見送られた。他の店に行く気にもなれず、おれは真っ直ぐ家に帰った。年を取ることのメリットは、自分をコントロールするのがたやすくなることだ。制御能力が高まるわけじゃない。そっちは変わらない。制御対象の欲と元気が減っていくのだ。

あれから間もなく、彼女の写真は在籍表から消えた。その店にはその後も行った。おれの知る限り、当時のスタッフはもう1人もいない。あの出来事のことなんて誰も知らないだろう。

これが、おれがソープで体験した唯一のトラブルだ。彼女のことは何とも思っていない。おれたちはあの部屋で会ったが、結ばれはしなかった。それだけのことだ。どこかで幸せに暮らしているといいのだが。

それにしても、だ。

女の勘って恐ろしいよ。あんたも気をつけた方がいい。

9 件のコメント

  • 童貞かどうかもこちらから話さんでも分かってしまうように、あまりに慣れてるとこういうこともあるんですね。
    この方に問題があると多分に感じますし、チナスキー様に同情しますが、末尾にあるよう
    女の勘ってのは怖いものがありますね。

    話が書けるところまで、心の整理がついたんですね。何年かかったかは分かりませんが。
    おつかれさまでしたm(__)m

    • 盛さん、いや、慣れたとしてもこういうケースは超レアだと思いますよ。ご覧になっている皆さんの中で、「普通の客じゃない!帰れ!(不潔とか乱暴以外で)」っていわれた人います?

      心の整理というか、そろそろあの時の関係者達もいないか、忘れているかどっちかだろ、という判断がつくまでに時間がかかりました。

  • 不適切と判断されたら、削除してください。

    過去に出逢った方に1人だけ、いろいろな改良工事をされた中でジェンダーを越えた方なのかなと思ったことがありました。

    その過剰な反応、危険を察知したのかもしれませんね。

      • そんな感じが少ししたんですよ。
        振る舞いや骨格など、おかしいなあっと。
        確証はなかったですが。

        もういなくなった方なので書きますが、
        写メ日記に「リフォームの見積もり取ったら、
        予想以上に莫大だった」なんて記述もあったので、サービスを受けた後に合点がいった感じです。

        憶測の域を出ませんが、いまの工事技術と
        リクルート方法を考えたら潜り込むことは可能でしょう。

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