子供のころ、僕はトランプ遊びが大好きだった。
お盆や正月に親戚が集まったときにトランプで遊ぶのが楽しみで仕方なかった。夕食を終えて風呂に入るまで、風呂から出てからみんなで寝るまで、ずっとトランプをしていたものだった。
僕の隣にはよく親戚の叔母さんが座った。叔母さんは自分が何歳に見られるかを異常に気にしていて、僕が「おばさん」と呼ぶと激怒した。叔母さんは自分のことを20代だと言い張り、「お姉さんと呼びなさい」と僕やいとこたちに言っていた。
叔母さんが僕の隣に座るのは、僕をカモにしていたからだ。叔母さんは自分のカードを扇子のように持ち、カードの背面を見せた。ときどき、1枚だけ取りやすいように他のカードよりも浮かせていた。それを引くと、そのカードはきまってジョーカーだった。
僕はいつもその手で騙された。分かっていても、1枚だけ浮いているカードを取ってしまう。逆側に座っている親戚や兄弟に何度も同じ手を試したけれど、誰も引っ掛からなかった。僕だけが、いつも同じ手でジョーカーを引いていた。
今日、あの頃のことを思い出した。
お店データ
場所:東京吉原
支払った総額:18,000円(60分)
フリー or 予約:フリー
営業時間:7時~24時
入店時間:平日夕方頃入店
待ち時間:10分
混み具合:他に5人

お店の雰囲気と店員さん
発端はドタキャンだった。2、3の例外はあるけれど、ドタキャンを喰らうと、ほとんどいつも失敗をする。
ソープは明日もある
休むもソープ
分からぬときは休め
売るべし 買うべし 休むべし
指名は取り消すな
すべてソープ格言である。焦ってはいけない。欲にかられて安易に手を出してはいけない。ドタキャンをされたら、その日は風呂が向いていない日だと思い、引き上げるべきなのだ。指名(予約)をしたら、ドタキャンを喰らっても、後日その指名を全うした方が失敗しなくて済む。焦って相手を変えると痛い目に遭う。
そういう自己管理ができてこそ大人の遊びである。私に言わせれば、自己管理能力を問わない遊びなど、大人の遊びではない。
ハーフボイルドのチナスキーは、自己管理能力が足りないようだ。ドタキャンを喰らって、フリーに流れてしまった。
それは、年初のある寒い日のことだった。
吉原に向かう途中に予約の確認をしたら、「体調不良で当欠」と言われた。ここで帰ればよかったのだ。気分に流されて、フリーで吉原に行ってしまった。
最初に行ったのはコートダジュール。空いているのは2人だけで、それ以外は3時間待ち。ひとこと詫びて、店を出た。丁寧に見送られた。次は吉原の反対側にある、とある店。受付にいた男は、人間はこれ以上面倒臭そうな態度を取り得るものだろうか、というくらいに面倒臭そうだった。
「いい子、たくさんいますんで。お任せだったら、割引しますんで。気になる子がいたら言ってください」
「この子はどうだい?」
「この子選ぶくらいなら、他にもっといい子たくさんいますよ。お任せだったら、割引しますんで。気になる子がいたら言ってください」
「おすすめは?」
「おすすめ、たくさんいるんで。気になる子を言ってください。お任せだったら、安くなりますんで」
「この子は?」
「いやー、この子は・・・正直、他の子のがずっといいですから。他に気になる子がいたら言ってください」
バカバカしくなって黙って店を出た。フリー客が嫌なら、看板の下にそう書いとけってぇんだ!
あの店の敷居を跨ぐことは二度とあるまい。チナスキーが来ないように粗塩とウエトラでもまいとけ。
次に行った11チャンネル。あたたかく迎えてくれた。店員のおじさんが、天使に見えた。気のみじけぇ江戸っ子が3店も回ったんだ。これ以上歩きたくねぇ。写真を見る前に、もうこの店にしようと半ば決めていた。
「大将、どんな子がお好みで?*」
「そうねぇ、サービスがいい子がいいねぇ」
「それなら、この子かこの子ってぇとこですね」
2人ともランカーだった。しかも結構な上位。そのうちの1人はどこかで見たと思ったら、2年前にフリーで来た時も出てきた写真だった。現在も2年前もランキング入りしているのはたいしたものだが、この時期にランカー2人がすぐに行けるというのはいかがなものか、感心と疑念が交錯した。
「この子はどうだい?」
別の、若そうなビジネスパーソンの写真を指差して聞いた。
「う~ん、この子はちょいと、写真が良すぎるんでサ」
「そうかい。じゃあ、今日はこの子にしようかね」
私は、ランカーの1人 – 2年前にも写真が出たビジネスパーソンではない方の写真を指差して言った。
「ありがとうございます!10分ほどお待ちを!」
料金を払って、案内部屋に入った。先客が2人いた。10分の間に、何人かが入れ替わった。ランカー2人はフリーで行けるが、客はそこそこ多いように感じられた。
*若干、脚色をしています。実際にはもっと丁寧な話し方でした。
女の子
番号札を呼ばれて立ち上がった。案内部屋を出て、階段を覗き込むと彼女がいた。
私の中で何かが壊れた。
主に、私の中にある他者を敬う心と、人を信じて生きることを尊いと思う心が、取り返しがつかないくらいにダメージを受けた。私が将来偉い人になって、パネマジと吉原年齢を徹底弾圧するようになったら、今日が分岐点だったと言えよう。
私が見たのは彼女の顔ではなかった。会った瞬間、目元の皺に視線がフォーカスした。生を受けて20年、30年ではできない皺だ。私のスカウターが壊れていなければ、40歳は間違いなく超えている。「クイズ100人に彼女の年齢を聞きました」をやったら、90人以上が40オーバーと答えるだろう。
あのぉ・・・
ご婦人、もう少しアンチエイジングを頑張ってみてはいかがでしょうか?ほら、あの竹内まりや様でさえ、還暦を超えたと告白しておられるじゃないですか。ご婦人が20代を称するのは、ちょいと乱暴かと。せめて、「全力で抗ってるねー」みたいな感想を言われるぐらいの努力を見せないと・・・
しかも、あー、昔は高級店で人気があったんだろうな系の方ではなかった。
「え、この人がソープ?」系だった。格安店でまたにある「こんな子がソープなんて!」というポジティブサプライズではない。ダークサイドの「え、この人がソープ?」だった。簡単に言うと普通の40代の女性に見えた。芸能人で言うと、いとうあさこにちょっと似ていた。
サービス
彼女は明るい女性だった。私が心に負った傷を知ってか知らずか、とても明るい笑顔で挨拶をしてくれた。
我々は階段を上がり、部屋に入った。
どうやら、私は実直な性格らしい。だいたいいつも、部屋に入ると「そなたのなんと美しいことよ」みたいなことを言う。もしくは、髪が綺麗なら髪が綺麗、肌が綺麗なら肌が綺麗、指が綺麗なら指が綺麗と言う。今回は、微塵もそのような言葉が出てこなかった。嘘をついてもいいのだが、言葉が出てこない。60分間、彼女について、私はひと単語もコメントしなかった。
それでも我々は会話をした。彼女は会話には慣れているようだった。よく笑った。笑い声は可愛らしかった。それに楽しそうだった。
しかし、笑い声だけで指名は取れまい。セッションを終えた今、どういう経緯で彼女がランキング入りしたのか私には仮説さえ立てられないでいる。
というのも彼女のサービスはとても普通だったからだ。他のビジネスパーソンにもやってほしいと思ったのは、風呂の中で正面から私の太腿に座り、上から降ってくるようにキスをするというプレイだった。
それだけだ。
後は書くべきことはないし、思い出す価値もない。
チンコ親父は勃起しなかった。私の父は徹底した現実主義である。フェラチオをされているときに、「目を閉じれば、これが森口瑶子でも同じこと」なんて努力は一切通用しない。父の前ではあらゆる自己催眠の努力も妄想もあっさりと排除されてしまう。
チンコ親父は膨らみかけては、逃げるように萎えるを繰り返した。私は、そして多分、彼女も、私の股間に遊ばれていた。
そういうわけで、私の貴重な60分は失われていった。入店したときよりも1時間分だけ年をとって店を出た。
まとめ
「この子は写真が良すぎる」とアドバイスする親切さがあるのに、「この方は年齢が・・・」というアドバイスをしない、むしろ薦めるというのは、いったいどういう理由からなのだろうか?「誠実と金銭欲のあいだ」とか、そういうやつか?
しかも、ランキングに入っている。
とりあえず、ご本人の外見やサービスは脇に置こう。彼女は世間一般からするととても美人かもしれないし、普段のサービスはもっとレベルが高いのかもしれない。そうであったとしても、20歳差くらいの吉原年齢を目の前にして、「もうこの人に一度会いたい」と思う男がどれだけいるのだろうか?世の中そんなに甘くないと私は思うのだが、ランカーということは、そういう男が多いということである。
彼らの中にはこの店の他のビジネスパーソンにも会っている男もいることだろう。彼らは、その他のビジネスパーソンたちを差し置いて、今回の彼女をリピートするのだ。そうでなければ、原理的にはランキングには入れないはずである。
今回の彼女に負ける他のビジネスパーソンたちとは・・・?
何百といる同じ価格帯のビジネスパーソンではなく、今回の彼女を選ぶ、その多数(のはず)の男たちとは・・・?
こんなにも、吉原は謎の多い街である。
5段階評価
総合満足度:1
費用対満足度:1
ボーイさん:1
女の子ルックス:2(コメントに値しない)
スタイル:3(同上)
サービス:2(同上)
嬢の印象:君の干支は。
写真とのギャップ:当然、ある
他人の不幸は蜜の味だからなのか、それだけ共感できる体験をした方が多いからなのかはわかりませんが、失敗談はコメントが伸びますねw
ねっとりさん、そうですね。「良かった」の理由は多岐に分かれ、好みや相性もありますが、「最悪」はパターンが限定(パネマジ、吉原年齢、スリーサイズ詐称)されているので共感されやすいのでしょう。
AV男優が筋トレしていると公言していますが、
チナスキー様(チナスキーと呼び捨てにするのは失礼な気もしますし、そうかといって「様」をつけると
どこか違和感を感じる気もしますが、これ以外の呼び方もない気もしますので、このままチナスキー様と
自分はします。)は、筋トレをなさっていますか?週刊誌なんかのS〇x特集なんかでもよく筋トレやウォーキングが取り上げられたりしていますが・・・。
ふつう鍛えたりするのかぁとふと疑問が。
盛さん、プライベートに関するご質問にはお答えしません。ご了承ください。
失礼しました。
盛さん、いえ、大丈夫ですよ。質問するのも自由、答えるか答えないかも、これまた自由です。